欠損金の繰戻しによる還付について

新型コロナによる自粛生活に慣れすぎてしまい、土日に電車に乗って外出する気になれません。
としまえんが8月31日で閉園になるので、その前に家族で一度は行きたいと考えている今日この頃です。

さて今日は、法人税における欠損金の繰戻しによる還付についてまとめてみました。
通常の場合のほか、新型コロナ税特法による欠損金の繰戻しによる還付の特例についてもまとめました。

概要

青色申告法人について「前期黒字→当期赤字」の場合、欠損金の繰戻しによる還付請求をすることにより前期に納めた法人税の還付を受けることのできる制度です。
※これは税務署に払う国税(法人税・地方法人税)の制度ですので、地方税である法人事業税・法人住民税についてはこのような還付制度はありません。

通常の場合

対象:中小企業者等(資本金の額が1億円以下の法人など)

還付請求の手続:還付請求を行う場合は欠損金額の生じた事業年度の確定申告書の申告期限までに還付請求書を提出する必要があります。

新型コロナ税特法による欠損金の繰戻しによる還付の特例

1.⻘⾊⽋損⾦の繰戻し還付

対象:資本金の額が1億円超 10 億円以下の法人も利用可能です。

期間:令和2年2月1日から令和4年1月 31 日までの間に終了する事業年度に生じた欠損金額について適用されます。

還付請求の手続:還付請求を行う場合は欠損金額の生じた事業年度の確定申告書の申告期限までに還付請求書を提出します。(注)この制度の対象となる法人が令和2年7月1日前に確定申告書を提出している場合の請求期限は、令和2年7月 31 日です。

2.災害損失⽋損⾦の繰戻しによる法⼈税額の還付

概要:災害により災害損失欠損金が生じた法人について、
①災害のあった日から同日以後1年を経過する日までの間に終了する各事業年度
②災害のあった日から同日以後6月を経過する日までの間に終了する中間期間
において生じた災害損失欠損金額を、その災害欠損事業年度開始の日前1年(青色申告法人の場合には前2年)以内に開始した事業年度に繰り戻して法人税の還付を受けることができる制度です。

対象:青色申告法人だけでなく、白色申告法人でも適用が受けられます。資本金の額に関係なく災害損失欠損金を有するすべての法人が対象です。

災害損失欠損金:今回の新型コロナウイルス感染症の影響による費用や損失で、次のようなものです。(出典:国税庁HP/5 新型コロナウイルス感染症に関連する税務上の取扱い関係/問 2《法人税の災害損失欠損金の範囲について》  https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kansensho/pdf/faq.pdf

<災害損失欠損金に該当する費用・損失の例>
・飲食業者等の食材の廃棄損 
・感染者が確認されたことにより廃棄処分した器具備品等の除却損 
・施設や備品などを消毒するために支出した費用 
・感染発生の防止のため、配備するマスク、消毒液、空気清浄機等の購入費用 
・イベント等の中止により、廃棄せざるを得なくなった商品等の廃棄損
<災害損失欠損金に該当しない費用・損失の例>
・ 客足が減少したことによる売上げ減少額 
・ 休業期間中に支払う人件費
・ イベント等の中止により支払うキャンセル料、会場借上料、備品レンタル料
 ※ 上記のように、棚卸資産や固定資産の被害の拡大・発生を防止するために直接要した費用とは言えないものについては、災害損失欠損金に該当しません。

法人事業税・法人住民税について

欠損金の繰戻しによる還付は税務署に払う国税(法人税・地方法人税)の制度ですので、法人事業税・法人住民税(地方税)についてはこのような還付制度はありません。
ただ、法人住民税法人税割の課税標準は法人税額(国税)を用いますが、その後10年間においてこの還付を受けた法人税額を控除して法人住民税を算出することができます。

還付の時期

さて、この「欠損金の繰戻しによる還付請求」に基づく還付の時期ですが、申告書提出期限日(又は還付の請求がされた日)の翌日以後3月を経過した日から還付の際に還付加算金がかかるため、それ以前に還付されることがほどんどのようです。

課税所得が赤字の場合、法人税の申告によって利子源泉税の還付を受けることがよくありますが、この「欠損金の繰戻しによる還付請求」に基づく還付金は、利子源泉税とは別の時期に還付されることがほとんどです。
これは、法人税法第80条において、還付請求書の提出があった場合には必要事項を調査するよう定められているためです。
法人税法 第80条(欠損金の繰戻しによる還付)
7 税務署長は、前項の還付請求書の提出があつた場合には、その請求の基礎となつた欠損金額その他必要な事項について調査し、その調査したところにより、その請求をした内国法人に対し、その請求に係る金額を限度として法人税を還付し、又は請求の理由がない旨を書面により通知する。

調査というと嫌な印象があるとは思いますが、実地の調査でなく、机上調査の場合もよくあるようです。当事務所でも、数件欠損金の繰戻しによる還付請求を行っていますが、特に問い合わせもなく還付されています。

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